皆さまは「地面師 ( じめんし )」 を知っていますか…?簡単に説明すると、不動産の所有者になりすまして売却代金をだまし取る詐欺師のことです。
2017年に積水ハウスが63億円をだまし取られたニュースが流れましたので、記憶にある人もいるかもしれませんね。
この詐欺事件が報じられてから、不動産取引の相手方(売主さま)が本当に所有者なのかどうか…、買主さまが不安を感じているように思います。しかし、一部の不動産売買契約では売主さまが所有者であることの確認が行われていません。
そこで、不動産売買契約の場において、売主さまは自分が所有者であることを証明できなければいけない!ということを知ってもらい、さらに、証明するための方法を解説しておきたいと思います。
●地面師とは??
地面師というのは、不動産の所有者になりすまして勝手に不動産を転売することで、売却代金をだまし取ったり、担保に入れてお金を借りる詐欺師・詐欺グループのことです。
地面師は複数の人数でグループを組んで詐欺をはたらきます。
■ 所有者に成りすます役
■ 書類を偽造する役
■ 土地を探す役 など。
地面師は買主さまを信用させるために、
■ 運転免許証・パスポート・印鑑証明書などを偽造
■ 公的書類を準備
■ 法律の有資格者の協力を得る
など、周到な準備をしてきます。
積水ハウスやアパホテルなどの大きい会社でさえダマされていますし、その取引に関与した司法書士先生なども詐欺に気づけなかったことになりますから、プロの詐欺集団が本気になれば見破るのはかなり困難だと言えるでしょう。
実際にあった事例を紹介します。
とある司法書士先生は、残代金決済(=引渡)の場で印鑑証明書の偽造を見破り、地面師による詐欺を防いだことがあるそうです。
どうして気づけたのでしょうか…?
日程を早めようと必死だったリ、
書類の提示を渋ったり、
挙動不審だったり、
所有者らしい会話がなかったり…。
「何か怪しい雰囲気」を感じたとのことでした。
この司法書士先生は、何気ない会話をしながら、本当に所有者かどうかの見極めを最後に行っているそうです。手続きが終わるまで何もしゃべらない司法書士もいますから、こういう所でプロ意識の差が出ますね!
書類を完全に作り込まれた場合、最終的には人の心理状態から探るしかないのかもしれません。経験豊富でコミュニケーション能力が高い司法書士先生に仕事を依頼すること、これも安全な不動産取引を実現するためには大事なことだと改めて感じました。
●売主さまが売却不動産の所有者であることを売買契約の場で証明しましょう!
不動産売買契約の場では、売主さまの本人確認として次の物が必要です。
■ 登記済権利証(登記識別情報通知)
■ 実印
■ 印鑑登録証明書
■ 運転免許証・パスポートなど顔写真付きの本人確認資料
■ 住民票
売買契約書に直筆した氏名・住所が上記書類と合致しているかを確認します。また、押印した実印と印鑑証明書の印影が一致するかを買主さまの目の前で確認しましょう。最後に売主さまの顔と運転免許証の写真が一致するかを確認します。
このように、公的書類・登記済権利証を使うことで所有者確認をするのですが、残念ながら一部の会社は不動産売買契約でこのような確認がされていません。大手ではこれらの書類を準備することを求められますが、会社に提出するために集めているだけで、何のために必要なのかを理解できていないようです。
●積水ハウス地面師被害事件
この事件はJR山手線「五反田」駅近くにある約2000㎡の旅館跡地における詐欺事件です。地面師グループが積水ハウスへ権利移転する手続きをしていましたが、法務局で印鑑証明書の偽造が発覚し、権利移転まではされませんでした。しかし、積水ハウスが支払ったお金は詐欺グループに持ち逃げされている…というものです。
警視庁が偽造有印私文書行使容疑で8人を逮捕。2018年11月26日、詐欺と偽造有印公文書行使の疑いで再逮捕。
その後も逮捕者が増え15人を逮捕。
2020年3月、東京地裁は詐欺計画の立案役である内田マイク被告に対して懲役12年の実刑判決。
その後2020年6月、東京地裁は主犯格のカミンスカス被告に対して懲役11年の実刑判決。
この事件が発覚したことで、不動産取引の安全性を強く意識する人が増えました。しかし、時間の経過とともに意識が薄れていると感じられるため今一度気をつけていきましょう。