リフォーム後に、吐き気や目眩、のどの痛み、息苦しさ、咳、体が痒みといった健康被害が生じるケースがあることをご存知でしょうか?
これらの健康被害は総称してシックハウス症候群といいますが、実は年々増えているといわれています。
埼玉県朝霞市に在住のAさん(45歳)は今から2年ほど前に築30年の中古の戸建住宅を購入。
その際、約1千万円をかけて経年で傷んだキッチンや浴室などの水回りを中心にリフォームを行いました。
ひと月ほどで工事は終わり、Aさん一家は新居での生活をスタートさせました。
リフォームによって新築とはいかないまでもきれいに生まれ変わった家は快適で、最初は奥さんやお子さんもとても喜んでいたそうです。
しかし、ひと月ほどが経過した頃から、そんな生活に翳りが見え始めました。
「妻が、頭が痛いと言って寝込むことが増えたんです。もともとそれほど丈夫な方ではありませんでしたが、かなり辛そうな日もあったので、念のため病院で診察してもらいました。しかし結局原因は分かりませんでした。」
そんなある日、Aさんは仕事の関係で半月ほど家を留守にしなければならなくなりました。
奥さんは不調が続いていたため、不在中はお子さんを連れて実家に帰ることにしました。
Aさんは出張から戻った翌日、奥さんとお子さんを迎えに奥さんの実家を訪ねました。
驚いたことに、奥さんは半月前の様子からは想像できないほど元気に回復していました。
「新生活で精神的なストレスがあったのかもしれない。でも、もう大丈夫。」
奥さんの言葉を聞いてすっかり安心したAさんは、新居での生活を再開させました。
ところが、1週間ほどするとまた奥さんが頭痛を訴えるようになりました。
さすがに精神的なストレスだけが原因ではないなと感じ たAさんは、改めて別の病院で奥さんを診察してもらいました。
Aさんから
「奥さんは実家にいる間は体調は回復して元気だった。」
という話を聞いた担当医は、ある可能性について言及しました。
「最近、家のリフォーム直後に体調不良を訴える方が増えています。原因はリフォームで使った内装材から放出される有害物質です。
内装材の中にはまれに建築基準法に定めらえた基準値を超える量の有害物質を放出するものがあります。一度、施工した業者に確認してみた方がよいかもしれ ませんね。」
担当医の助言に従い、田中さんはすぐに工事を頼んだ業者に連絡しました。
仔細を聞いた業者はすぐに施工で使った図面や仕様書一式をもってAさん宅にやってきました。
業者はデザイン性をウリにした地元で評判のリフォーム会社でした。基本的には有害物質の一つであるホルムアルデヒドの発散量が少ない材料を使っているそうなのですが、一部、デザインが良いという理由で輸入建材を使っていて、もしかしたらそれらの中に問題があったのかもしれないということでした。
確認したところ、田中さん宅のリフォームで使用された内装材の中で、 唯一、海外製だったのはフローリングでした。いきなりすべての内装をやり直すのは無理なため、いったんフローリングだけを貼り替えて様子を見ることになったそうです。
工事中、奥さんは再度、実家で過ごしました。
貼り替えが終わってからしばらくして、田中さんとご家族は再び新居で暮らし始めました。
いつまた症状が出るか最初は不安だったそうですが、 1週間、2週間経っても奥さんが頭痛になることはありませんでした。
科学的な明確な根拠があるわけではないのでフローリングが原因だったとは言い切れません。ですが、Aさんのケースでは業者さんがきちんと対応してくれたおかげで追加費用等も一切かからず状況を改善することができました。
内装材だけでなく、有害物質は家具や衣類の防虫剤などからも放出さ れます。
それでも昔の家は自然換気ができていたため特段問題はありませんでしたが、気密性が高く室内の空気が滞留しがちな現代の家は、わずかな量でも健康を損ねることがあります。
使用する内装材の確認はもちろん換気面にも気を配るようにしましょう。