天井と壁の境目にある「廻り縁(まわりぶち)」や、壁と床の境目の「巾木・幅木(はばき)」には、どんな役割があるのでしょう。
●廻り縁(まわりぶち)や「巾木・幅木(はばき)」って何? 付ける目的は?
廻り縁とは? 巾木・幅木とは?
廻り縁とは、天井と壁の境目に取り付ける部材のことです。天井材と壁材との境目には施工上、どうしても隙間ができてしまいます。その隙間を隠すのが廻り縁の役割です。木造建築だけでなく、天井と壁がコンクリートで繋がっている鉄筋コンクリート造でも、コンクリートの上に天井や壁をそれぞれ取り付けるので、その間に隙間がどうしても出来てしまいます。
つまり、天井と壁の隙間を隠して見た目をきれいにしてくれるのが廻り縁なのです。天井と壁を同じ素材・色で、例えば珪藻土などで塗る場合は隙間ができないので、廻り縁を省くこともあります。
同様に巾木・幅木とは、壁と床の境目に取り付ける部材のことです。こちらも壁と床にできる隙間を隠して、見た目をきれいにする役割と、掃除機を使用する際に壁にぶつけてクロス等を傷つけない役割があります。
白い廻り縁と巾木・幅木の施工例
同じ白い廻り縁・巾木・幅木でも、壁や天井、建具とのコーディネート次第で、部屋の印象が変わる
●廻り縁や巾木・幅木の種類
廻り縁・巾木・幅木の素材
廻り縁や巾木・幅木の素材は天然木や、化粧シートを張ったMDF(中密度繊維板)といった木材系が主流です。巾木・幅木にはより安価で水に強いビニール製のタイプもありますが、住宅メーカーの住宅や注文住宅で使用することはあまりありません。主にクッションフロアなど同じビニール系の床材と合わせて一部のマンションや賃貸住宅等に使われています。
また化粧シートタイプはある程度水や油汚れに強いため、わざわざキッチンなど水まわりにビニール製を使う必要はないそうです。その他、輸入材にもむく材や、ポリスチレン製などの樹脂系もあります。そのほか巾木・幅木では、床の仕上げがタイルの場合にそのまま立ち上げて、タイルを巾木・幅木として使うこともあります。
廻り縁・巾木・幅木は色や形が豊富
先述の通り廻り縁や巾木・幅木はインテリアの一部。そのためさまざまなインテリアテイストに合うよう、多様な色が用意されています。特に化粧シートは高度な印刷技術で色や柄を自在に操れるため、ホワイトなどの単色から天然木のような柄、また同じ木目柄でも色の濃さが少しずつ異なるなど、多彩な色や柄が用意されています。
形状も豊富です。大まかに分けるとスッキリとしたデザインと、デコラティブなデザインがあります。デコラティブなタイプは主に輸入材が中心です。例えばスッキリとさせてなるべく目立たないようにデザインされた廻り縁や巾木・幅木は、壁や床材、その部屋に置いた家具類を引き立てやすくなりますし、デコラティブなデザインは例えばクラシカルな室内で装飾品の一部として存在感が出ます。このように、形状もインテリアの考え方に合わせて選びやすくなっています。
スッキリ見せたい廻り縁の例
装飾としての廻り縁の例
●廻り縁や巾木・幅木の選び方
注文住宅なら色や素材も自由に選べる
住宅メーカーで家を建てる場合、商品によっては廻り縁や巾木・幅木がある程度決まっていて、そこから選ぶことが多いようです。一方で注文住宅の場合は基本自由に選べます。廻り縁や巾木・幅木の選び方は、ドア・ケーシング(ドアの枠)・壁・床・天井の色や素材、またインテリアのテイストによって変わります。例えば巾木・幅木とケーシングのみそろえたり、ドアとケーシングのみそろえたりなどさまざまな手法があります。
廻り縁や巾木・幅木をつくる建材メーカーも、自社のドア等にコーディネートしやすいよう、同じ質感で同じ色柄などを用意しています。
むしろ選ぶバリエーションが多いと自ら選ぶのが大変と思う方も多いのではないでしょうか。そういうときは施主にまず好みや予算、希望のテイストを伺い、それを踏まえて何パターンか提案して選んでもらっているハウスメーカーも多いようです。
ご自身で選んでみたい、あるいは提案されてもどれがいいか迷いそうと思ったら、インテリア雑誌などで廻り縁や巾木・幅木と他の部分とのバランスなどに注意しながら見ておくのがオススメです。
耐久性やメンテナンス性
廻り縁や巾木・幅木の耐久性はどうなのでしょうか。昔は化粧シートが剥がれたりしたこともありますが、今は技術が向上していてそういったことはほとんどありません。ただ巾木・幅木に掃除機をぶつけたりすると凹んだり、コーナー部分なら剥がれることもあります
それに対応するため、コーナーに取り替え可能なキャップを用意している国産メーカーもあります。
巾木・幅木の角を傷や汚れから守る
また日々のメンテナンス性でいうと、巾木・幅木の上面にどうしてもホコリがたまりがち。そこを掃除するのが大変ですが、最近は下記のようにホコリがたまりにくいデザインのものや、大工仕事で巾木・幅木を壁に埋め込む方法もあります。
ホコリのたまりにくい巾木・幅木
家を建てる際やリフォームの打ち合わせで、初めて『廻り縁』や『巾木・幅木』という言葉を聞く人のほうが多いと思いますが、実はインテリアの印象を左右する重要な部材。色や柄、形状も意外と多いのです。その分、選ぶのが大変ですが、まずはその部屋をどんなインテリアテイストにしたいか、雑誌等の写真をたくさん見て参考にしてくことから始めてみましょう。