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不動産豆知識

取壊し目的の建物売買と2年前の自殺

大阪地裁判決 平成11年2月18日
(判例タイムズ 1003号 218頁)

 

《要旨》
 新築分譲住宅を建設する目的で土地付中古住宅を購入した業者が、建物を取り壊した後、同建物内で2年前に首吊り自殺があったことを知って契約解除を求めたが棄却された事例

 

 

(1) 事案の概要
 買主業者Xは、平成10年3月、売主Yから、新築分譲建設目的で、土地付中古住宅を1,600万円で買い受け解体したとことろ、平成8年にYの母親が建物内で首吊り自殺していたことが判明した。
 Xは、Yがその事実を説明しなかったとして売買契約を解除し、Yに対し、違約金及び解体費用410万円の損害賠償を求めた。
 
 

(2) 判決の要旨
 (ア)Xが本件土地建物を買い受けたのは、取壊して新築住宅を建設、分譲するためであり、契約後解体されているから、Xの意思は主として
     土地取得のためにあったと認められる。

 (イ)継続的に生活する場所である建物内で首吊り自殺があったという事実は、民法570条の瑕疵に該当する余地があると考えられるが、
        本件においては、本件土地について、かつて本件土地上に存していた建物内での自殺であるから、嫌悪すべき心理的欠陥の対象は
        もはや特定できない一空間内におけるものに変容しており、嫌悪の度合いは通常一般人が本件土地に新たに建築された建物を居住の
        用に適さないと感じることが合理的であると判断される程度には至っておらず、Xの転売が不能であるといえない。

 (ウ)したがって、本件自殺があったという事実は、隠れたる瑕疵には該当せず、Yに説明義務はない。

 (エ)よって、Xの請求は理由がなく、棄却する。

 

 

(3) まとめ
 これまで、判例は、売買物件において過去に自殺があった場合、物件が存続しているときは、6年3ヵ月前(横浜地判平成元年9月8日判例時報1352号126頁)、6年11ヵ月前(東京地判平成7年5月31日判例時報1556号107頁・別掲)でも瑕疵担保責任はあるとしている。反面、自殺のあった座敷蔵が取除かれて存在しないときは、住み心地のよさを欠くとはいえないとして瑕疵担保責任を否定した判決がある(7年6ヶ月前の自殺、大阪高判昭和37年6月21日判例時報309号15頁)。本判決も、「もはや特定できない一空間におけるものに変容」したとした、昭和37年の大阪高判と同旨の判決である。
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