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不動産豆知識

自動車通行に関する説明義務

私道についての一般車両が通行可能と買主に誤信させた媒介業者及びその担当者に損害賠償責任を認めた事例(東京高判 令5・2・14判例集未登載)

 

住宅建築販売を目的とする買主業者が、私道について自動車通行可能と説明を受けて土地を購入したところ、私道所有者から一般車両の通行は承諾していないとされたことから、売主並びに私道所有者と私道通行に関する承諾書のやり取りをしていた媒介業者、その担当者に損害賠償を求めた事案において、売主の責任は否定し、媒介業者らの賠償責任を認めた事例。

 

 

1.事案の概要

買主X(原告、宅建業者)と売主Y1(被告、個人)は、平成30年8月、Y2(被告会社)を売主側仲介業者、Aを買主側仲介業者として、代金8800万円で本件物件の売買契約を締結した。なお、本件売買契約には、売主は、本件物件の隠れた瑕疵について一切の担保責任を負わない旨の瑕疵担保責任免除 特約が付されていた。
Xは、平成31年4月、本件建物の解体工事に着手した後、私道所有者であるBらから、一般車両の本件私道通行は認められない旨告げられた。
Xは令和元年7月、Y1及びY2に対し、Yらが、本件私道について一般車両の通行が可能であるとの虚偽の説明をしたとして、瑕疵担保責任及び説明義務違反に基づき、本件売買契約を解除し、損害賠償を請求する旨通知した。
Xは、その後、上記解除の意思表示を撤回し、令和元年10月、Cとの間で、売買代金を8980万円として、本件土地の売買契約及び請負代金を4000万円とする本件土地上の建物建築工事請負契約を締結し、 Bから、本件土地売買代金及び上記建物工事請負代金合計1億2980万円の支払を受けた。
Xは、本件私道について、自動車通行をしない旨の私道所有者間の取決めがあることについて、Y1、Y2および営業担当者であったY3(被告)は、説明すべき信義則上の義務を負っていたのに、故意又は過失により説明をしなかったと主張して、債務不履行又は不法行為に基づき、損害賠償金等の連帯支払を求め、Y1に対しては、予備的に、本件私道の自動車通行が事実上不可能であることは本件物件の瑕疵に当たると主張して、売主の瑕疵担保責任に基づく損害賠償金等の支払を求め、本件訴訟を提起した。
 
 
 
2.判決の要旨
裁判所は、次のように判示し、Xの請求を一部認容した。
(1)説明義務および説明義務違反の有無 私道所有者間で合意された本件私道における一般車両の通行不可という取決めの存在は、土地の減価要因であり、積極的な売買交渉を妨げる阻害要因であったことは明らかであるにもかかわらず、XとY1との間で本件売買契約が平成30年8月に締結されるに至ったのは、X側で、Aを通じてY2から交付された本件私道の一般車両の通行を承諾する旨の本 件承諾書により上記減価要因が解消されたと判断したためであったと考えられる。ところが、本件承諾書は、Y3が本件私道の無償通行が認められる車両を工事車両に限定した書面と後日差し替える旨約束したことを前提に作成されたものであって、本件私道の一般車両の通行を認めるという部分はBらの真意に基づかない無効なものであった。
そして、Y3は、本件承諾書がXに交付され、Xにおいて本件取決めが撤回されたと誤信するであろうことを容易に認識することができたのに、本件売買契約の締結に当たって、Xに対し、本件取決めが実際には撤回されていないことを口頭によっても書面によっても説明しなかった。 
以上の事情に照らせば、Y3が、本件承諾書により誤信に陥っていたXに対し、倉義則上の説明義務に違反して、本件売買契約の締結に先立ち、本件取 決めが撤回されていないことを説明しなかったことは、Xがその購入金額の適否を十分に検討した上で同金額により本件売買契約を締結するか否かを決定する機会を奪った違法行為であったと評価することができるから、Y3の不法行為が成立するというべきであり、この不法行為は、使用者であるY2の事業の執行についてされたものであったから、Y2は使用者責任を負うというべきである。
これに対し、Y1は、Xと同様に、本件承諾書によって本件取決めが撤回されたものと誤信しており、Y3の故意の不法行為により上記のように誤信したY1に故意はもとより過失があるともいえないから、Y1の不法行為は成立しないというべきであ る。
 
(2) Xの損害について Y3の不法行為は、Xがその購入希望金額の適否を十分に検討した上で、同金額により本件売買契約を締結するか否かを決定する機会を奪ったということにあり、不動産売買契約における購入金額の適否という財産的利益に関する意思決定権を侵害したにとどまるのであって、本件私道の一般車両の通行不可という条件を前提としながら買付証明書を発行し、本件物件の購入後比較的短期間のうちに、しかも、購入価格を上回る価格で本件土地を転売することができたXにおいて、上記不法行為がなければ本件物件を購入しなかったとまでは認めるに足りないから、X主張の本件物件取得費用等は上記不法行為と相当因果関係のある損害とはいえない。よって、上記意思決定権の侵害についての慰謝料としては 100万円をもって相当と認める。また、その弁護士費用としては10万円をもって相当と認める。
 
(3)結論 以上によれば、XのY2及びY3に対する不法行為を理由とする損害賠償請求は、上記の限度で認容すべきであり、Xのその余の請求はいずれも理由が無いから、これを楽却する。
 
 
 
 
3.まとめ
 私道利用の紛争は多く、取引上注意すべきポイントである。本件私道は建築基準法42条2項所定の道路で現実に開設されている道路であるが、通行者には然に同道路を自動車で通行する権利が認められるものではない(最高裁H12.1.27第一小法延参照)。 仲介会社としては、私道所有者間の取決めの有無、取決め内容について、売主へのヒアリングを行い、状況に応じて私道所有者への確認を行うことも必要と思われる。
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