部屋を借りる時の初期費用として「敷金・礼金」という言葉を聞いたことがあると思います。地域によっては「保証金」という言葉が使われることもあります。
「敷金・礼金」と「保証金」、それぞれ意味や制度の違いについて解説していきます。
◎返ってくる保証金と返ってこない保証金、違いについて
保証金は契約時に一旦貸主に支払うお金ですが、退去するときには保証金の中からいくらか返却されることになっています。
保証金の意味
保証金は借主が住んでいる間に何かあったときのために貸主に担保として預けておくお金のことです。退去する際、借主は部屋を原状回復する義務があります。
通常の使用による汚れや経年劣化による傷みについては借主の責任はないが、故意や不注意によって室内を壊したり汚したりしたときには原状回復をしなければなりません。そのための修繕費やルームクリーニング代を保証金という形で預けておきます。
また、家賃を滞納していた場合にも保証金から補てんされます。一方、原状回復のための費用があまりかからない場合や家賃滞納がなかった場合は保証金の一部が返ってきます。
◎「敷金」と「保証金」の違い
「敷金」と「保証金」は、地域の慣習によって違う呼び方をしているだけで、意味合いはほぼ同じだと捉えることができます。一般的に関東地方では「敷金」、関西地方では「保証金」と呼ばれています。
民法上では「敷金」や「保証金」についてはっきりとした定義がありませんでしたが、「民法の一部を改正する法律案」が平成29年5月26日に可決成立し、交付された法律の中で、敷金の定義や敷金の返還について明文化されました。以下のように説明されています。
第四款「敷金」の第六百二十二条の二
「賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
つまり、「敷金」とは借主が支払うべき金銭を負担する目的で、あらかじめ貸主に預けておくお金ということです。
また「いかなる名目によるかを問わず」とあるため、関西地方で「保証金」と呼ばれていても、同様の目的で貸主に預けるなら民法上は「敷金」という扱いになります。このように「敷金」と「保証金」の目的はほぼ同じですが、返還方法には違いがあります。
敷金の場合は預かった金額から未払いの家賃、原状回復の費用を差し引いて残額を返還するのに対し、保証金の場合は「敷引き」という方法で清算します。
保証金の内、家賃の何か月分あるいは何パーセントなどあらかじめ定めた金額を無条件で差し引くというものです。
◎敷金について
敷金は、貸主にとってはリスクの回避につながります。万一部屋をひどい状態にされてしまった場合、敷金を預かっていれば、その費用を賄うことができるからです。敷金の意味について、またその由来についても解説していきます。
敷金の意味
賃貸契約をするときに貸主に担保として預けておく費用のことです。退去時に家賃の未払いがあれば、敷金から差し引かれます。
また、借主の故意や不注意によって修繕やルームクリーニングが必要になった場合、原状回復のための費用として使用されます。実際にかかった費用との差額は借主に返還することが定められています。
ただし、契約によっては借主に原状回復の義務が生じない通常使用でも、退去時にルームクリーニング代を請求されることがあります。
◎礼金について
礼金の意味
礼金とは、家を貸してくれたことに対する感謝の気持ちとして貸主に支払う謝礼のことだ。礼金は敷金や保証金と違って返還されることはありません。
礼金は、戦後、住む場所があまりなかった時代に、住む場所を提供してもらえたことに対するお礼として支払っていたと言われています。あるいは、地方から上京する子どもの面倒を見てもらいたいという思いで、上京する人の親や親族が家主に支払ったお金だとも言われています。
いずれにしても、礼金は慣習として根付いているもので、法律で定義が定められているわけではありません。一般的に礼金は家賃の1~2か月分程度に設定されることが多いですが、近年「礼金ゼロ」という物件も増えてきています。