M太郎さんはY美さんと結婚し、長男A介と長女K子をもうけました。
M太郎さんは、株式会社を設立し事業に励み、会社が信用金庫から融資を受け宅地①にマンションを建設しました。
登記名義について、M太郎はY美と相談し、会社の名義にすると経営悪化の際に会社債権者から差し押さえ等を受けるおそれがあると懸念し、マンションの所有権登記名義をY美としました。
それから30年後。
Y美は原稿用紙を使い表題を「遺言書」として、本文には「Y美の所有する不動産の相続はM太郎に全て任せます。長男A介と長女K子には遺留分として8分の1ずつ遺します。」、くわえて記載年月日・署名・捺印をそえて自作しました。(この遺言書を、以下「遺言書文書」とします)
さらに、それから10年後。
Y美は郵便葉書の表にK子の住所・宛名・年月日、Y美の署名捺印、裏に「一応念のために…マンションはママのものです。Y美はマンションはK子にあげたいと思っています。K子のことが心配なの。」と書いてK子に郵送しました。(この葉書を、以下「葉書文書」をします)
その4年後。
Y美が亡くなり相続がスタートしました。相続人はM太郎・A介・K子。遺産は宅地①と②、および①地上のマンション。
(②地上にはM太郎とA介夫婦共有の住居)
翌年、M太郎とA介(原告ら)がK子(被告)に対し、「遺言書文書」の自筆証書遺言有効確認と「葉書文書」の自筆証書遺言無効確認を求める訴訟を東京地裁に提起しました。
M太郎とA介は「葉書文書は、マンションについてY美の考えを提案したものに過ぎない。相続させる旨の最終的意思を表示したものではない」と主張。
東京地裁は「葉書文書はY美の財産処分について確定的な意思が示されているとはいい難い。」また「遺言相続等死後処分に関する文言もないことから、葉書文書を遺言としての効果を生じさせる意思を有していたとは認められない。」と自筆証書遺言としての効力を否定。
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遺言書の解釈は「遺言書作成当初の事情や遺言書の置かれていた状況等の一切を考慮し遺言者の真意を探求する必要がある」と確立された判例もあります。
遺したいものがある方は「確定的な意思」を示す文書の作成が必要ですね!